原発事故における放射性物質とその対応

1、原子力発電に使用される放射性核種

原子力発電の燃料であるウランの原子核に中性子が当たると、原子核が分裂します。この現象を『核分裂』といいます。このとき核分裂と一緒に熱が発生します。原子力発電所では、この熱を利用して大量の電気をつくっています。

原子力発電所で使われている燃料は、核分裂しやすいウラン235を約4%、核分裂しにくいウラン238を約96%混ぜたものです。ウランはペレットと呼ばれる、セラミック状に焼き固められた小さな円柱形に加工され、これを束ねて燃料集合体が作られます。ペレット1個で、一般家庭で使う電気の約6カ月分を発電することができますが、玄海発電所の場合だと原子炉一基に約1,620万個のペレットが入ります。

ウランやプルトニウムが核分裂して生成する同位体の種類は非常に数多く、原子核の分裂のしかたは一定ではありません。

核分裂によって生じる物質について、詳しくみると、ウランは分裂すると2つの「核分裂生成物(放射性物質)」になります。しかし、いつも同じ物質が生成されるわけではなく、出てくる物質の可能性はなんと1000種以上もあります。また、その物質類は大きく2つのグループに分けることができます。

横軸は質量数で、放射性物質名の後についている数字のことです。縦軸は、ウランの核が1つ分裂したときにどれくらいの確率でその重さの物質が出てくるかを示しています。核分裂のときは、左の山から1つ、右の山から1つ出てきます。つまり、ヨウ素131は右の山から、その片割れが左の山から出てきます。セシウム137も右の山から、その片割れが左の山から出てきます。

たとえばセシウム137が出てくると、相棒としてルビジウム95も出てきます。では、なぜルビジウム95が検出されないのでしょうか。

それは、ルビジウム95の寿命が非常に短いからです。寿命を示す指標に、「半減期」があります。物質が半分の量に減衰するのにかかる時間のことですが、このルビジウム95の半減期は0.38秒。つまり生成からわずか0.38秒で、すでにルビジウム95の半分がストロンチウム95という別の物質に姿を変えます。さらに、このストロンチウムも半減期が24分ですから、すぐにイットリウム95(半減期10分)になり、次にジルコニウム95になります。


このジルコニウム95が実は問題です。ジルコニウム95の半減期は64日で、長い間なかなか減ってくれません。ただ、ジルコニウム95は金属なので燃料棒から出にくく、燃料棒がよほどの損傷を受けない限りあまり問題になりません。しかし、チェルノブイリの事故では、燃料棒が火を噴き、事故後約50100日目に他の物質に比べ多く検出されました。ヨウ素131でも同様です。相棒のイットリウムは、すぐに別の物質に変わっていきます。このように、核分裂生成物質の半減期の多くは1秒以下で、半減期の長い物質に落ち着きます。これが、特定された物質だけが検出される理由です。

2、原発の大事故で放出されるおもな放射性核種

事故後に検出される”特定された物質”は主に以下があります。

①放射性キセノン
原発事故で一番多く放出される核種は、キセノン133です。福島第一原子力発電所事故で放出された放射性物質の98%以上がこのキセノン133でした。
しかし希ガスでであるキセノン133は体内に蓄積しにくく、内部被曝の影響も少ないため、放射能汚染物質として扱われることはありません。

常温でも気体の放射性核種で、原子炉中のほぼ全量が放出される重い気体です。「放射能雲」が通過中に強烈な放射線を浴びせます。しかし「放射能雲」の通過後には残りません。

②ヨウ素131
ヨウ素は184℃で気体になるため、原発事故でひじょうに放出されやすい物質です
天然のヨウ素はすべて安定なヨウ素127で、放射性のヨウ素は存在しません。ヨウ素は必須微量元素で、咽喉(のど)の近くの甲状腺に集められ成長ホルモンの成分になります。呼吸や水・食物をとおして放射性ヨウ素を取りこむと、ふつうのヨウ素と同じように甲状腺に集められ、甲状腺が集中的に被ばくします。
ヨウ素131の半減期は8日なので半年後にはほとんど消滅します。しかし遺伝子についた傷が残ると、甲状腺ガンを引き起こします。チェルノブイリ原発事故による子どもの甲状腺ガンは事故の5年後に現われ始め、10年後にピークになりました。発症率は、汚染地区が多いゴメリ州全体で、子ども約1000人に1でした

若年者、特に、成長段階の子供の場合、その放射性ヨウ素を甲状腺に取り込んでしまうため、事故発生すぐに、安定ヨウ素剤を服、先にヨウ素で一杯の状態にしてしまい、放射性ヨウ素を取りこまないようにすることができます。 放射性ヨウ素を取り込むと甲状腺ガンを引き起こす可能性が高いとされています。なお、40歳以上の方は服用しなくても問題なしとされてきましたが、最近では、40才以上の方にも服用を推奨されています。

③セシウム137
セシウムも678℃で気体になるため、原発事故で放出されやすい物質です。
セシウム137は、半減期が30年と長く。またセシウムは土壌粒子と結合しやすいため長い間地表から流されません。このため、短寿命の放射性核種やヨウ素131が消滅したあとにも残ります。地面から放射線を放ち続け、農作物にも取り込まれて、長期汚染の原因になります。
旧ソ連では、セシウム1371平方メートルあたり150万ベクレル以上(1平方メートルあたり0,004グラム以上!)の地域を強制立退き地域にしました。高濃度汚染地域は、チェルノブイリ原発から約250kmの範囲に点在しています。
過去には、1960年代末までの大気圏核実験によって18500万京ベクレルという、膨大な核分裂生成物がばらまかれ、地球全体を汚染しました。核実験によるセシウム137は、現在も海水・地表・大気中に残っています。

④セシウム134

セシウム134はウランの核分裂では出てきません。だからたとえば原爆から出てきた放射性物質にはセシウム137は含まれているがセシウム134は含まれていませんセシウム134が出てくる理由は以下のとおりウランが核分裂するとキセノン133が生まれます。キセノン133はベータ崩壊して安定なセシウム133になります。 このセシウム133が原子炉の燃料の中に置かれていると、核分裂の際に出てくる中性子を捕獲してセシウム134になります。だからセシウム134の量は、原子炉がどれくらいの期間運転していたか、あるいは、使用済み核燃料がどれくらいの期間使用されていたかを反映します福島原発の事故で放出されたセシウムの場合、134137比 は、(放出直後には)ほぼ 1 に等しい。 土壌の調査でも、海水の調査でも、ほぼ 1 という結果が出ていますセシウム137セシウム134 はいったん放出されればまったく同じように拡散していくはずだから、これは、もともとの汚染源(燃料、あるいは、使用済み燃料)での存在比をそのまま反映していると考えられます

なお、両者の量がベクレルで測ってほぼ等しいからといって、普通の意味で両者が「同じだけある」というわけではありません。 崩壊率は 15 倍違うから、 通常の物質量(モル数や質量)で測ればセシウム137セシウム134の約 15 倍あるということになります

⑤ストロンチウム90

半減期28.79年でβ崩壊によりイットリウム90となりさらにβ崩壊後ジルコニウム90となります。揮発性が少ないので(融点769℃、沸点1384℃)原発事故では飛散は少ないといわれていますが、福島のように炉心が充分空焚きされて高温になり、燃料棒の被覆材であるジルコニウムが融解して内部が露出すれば飛散は十分考えられます。毒性は高く内部被爆すると骨などに沈着して、排出されにくくβ線被爆します、崩壊後のイットリウム90はストロンチウム90β崩壊エネルギーの4倍以上のエネルギーのを放出します。

もうひとつ重要なのは、ストロンチウムがカルシウムと似た性質を持つため、水溶性であり、生物濃縮を起こすことです、セシウムも水溶性なのですが、排出されやすいのでストロンチウムほど問題にされません、一方ストロンチウムは魚などの骨に沈着する性質上、小魚から中型魚、大型魚それを食べるアザラシ、シャチ、くじらなどへ濃縮されていきます。

(⑥プルトニウム239
プルトニウム239は原発事故ではあまり遠方には放出されず、大部分は事故原発の敷地周辺にとどまると思われます、参考のために記します。プルトニウム239は核分裂反応でつくられるのではなく、核分裂反応により放出される中性子を燃料棒中のウラン238が吸収して生み出されます。プルトニウムは94個の陽子をもつ。天然には陽子を92個もつウランよりも陽子数が多い元素は存在しないので、陽子を93個以上もつ人工元素を超ウラン元素といいます。
プルトニウム239の半減期は長く24千年もあり。これは地球の年齢とくらべれば十分に短いのですが、人間の時間から見れば半永久的に長いです。

3放射性物質の経路と対応

①放射性物質の塵(「いわゆる放射能雲」)が通過中の被ばく。一時的。


体内からの被ばく。飛来した放射性物質や、地面から巻き上がった放射性物質の塵を吸い込むことにより、体内に入った放射性物質から被ばくするもの。放射性物質が体外に排出されないかぎり、放射性物質の種類ごとに固有の期間で放射能が減衰し消滅するまで被ばくはつづきます


地面からの被ばく。放射能雲から地面に降下した放射性物質は、洗い流されないかぎり放射線を浴びせつづける。その場所にとどまるかぎり被ばくを受けつづけ、総被ばく線量は時間に比例して増えていく。短寿命の放射性物質は短期間に減衰していくが、セシウム137は土壌粒子と結合して数10年以上とどまり、被ばくを与えつづけます


飲み水や食品を通じて放射性物質を取り込むことによる被ばく。

①の通過中の「放射能雲」からの総被ばく線量は、③の地面に降下した放射性物質からの時間あたり被ばく線量の23時間分になり、②の体内にとりこんだ放射性物質からの総被ばく線量は③の2050時間分になります
そこで身を守るためには、
については「放射能雲」通過中は地震で壊れなかった密閉された建物に避難し、できるだけ窓から離れる。
については「放射能雲」通過中は、口と鼻を濡れタオルでおおって放射性物質を吸い込まない。
については、できるだけ早く汚染地区から離れる。
については、できるかぎり体内に取り入れないということになります。  

4、玄海原発にて事故が起こった場合

玄海原発から50km圏内にある我が家は、風向きが西風になった場合はかなりの被害があると思われます。上の図を見ると、真西からの風が吹けば、唐津等よりも放射性核種の飛散が多くなる可能性があります。

放出された放射性物質は、晴れの日には吹き上げられて広がる。曇りの日には低くたなびく。雨天では雨水に洗われて狭い範囲に降り注ぐ。雨に濡れることは絶対に禁物です。

まず、自分の方向が原発の風下かどうか確かめる必要があります。風向きの変化にも注意しましょう。
いざというときには風の向きと直角に避難しなければならないから、その方向と経路を思い描く必要があります

5、最後に

川内原発が再稼働され、いずれは玄海原発も稼働されると思われます。国際情勢等を考えると、北朝鮮によるミサイル攻撃による原発事故、もしくは、それ以外の原子力発電所をターゲットとしたテロ行為も想定しなければならないと思います。

原発災害にどのように対応したら良いか、その対応は何の為に行うのか、放射性物質の性質などを知っておく事などは重要だと思われます。事故が起こってからでは遅いので、シュミレーションしておくとともに、ヨウ素剤や防護マスク等の準備をする必要があると思います

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