放射線とは何
1、放射線とは
放射線は、大きく分類すると、光や電波に似た波の性質をもつ電磁放射線と、粒子の性質をもった粒子放射線に分けることができます(粒子放射線線は電気を持つものと持たないものに分けられます)。
電磁波の中で高いエネルギーを持つものが、ガンマ線とX線です。
粒子放射線である、アルファ線、ベータ線、中性子線は、それぞれヘリウム原子の中心にある原子核が高速で動いている状態が「アルファ線」、電子という微粒子が高速で動いている状態が「ベータ線」、中性子という微粒子が高速で動いている状態が「中性子線」です。
- 電磁放射線
電磁放射線は、電磁波の種類の一つであり、可視光やテレビやラジオの電波と同じ仲間です、ガンマ線やX線は波長が短くエネルギーの高い電磁波であり、ガンマ線とX線の違いはエネルギーに関係なく発生の仕方(γ線は原子核から発生、X線は原子核の外側から発生)の違いによって分けられます。
- 粒子放射線
粒子放射線(粒子線)は質量を持った粒子の運動によって生じるものです。その物理的実体としては、原子を構成している素粒子や原子核そのものであったりします。
大まかに説明すると、すべての物質は原子からできています。原子は、陽子と中性子からできている原子核が中心にあり、そのまわりを電子が回っているという構造になっています。
原子の構成成分である、電子や陽子、中性子を加速器という装置で非常に速いスピードに加速すると放射線になりますます。電子の速い流れは電子線、陽子の流れは陽子線とよばれます。これらを総称して粒子放射線(粒子線)と呼びます。粒子放射線というと、何か特別なもののように思われるかもしれませんが、身近で広く使われており、たとえば蛍光灯やテレビのブラウン管は電子線を使った装置です
2、放射線の種類
一般的に4つに分類されます。
①アルファ線
原子核から放出される粒子(陽子2個・中性子2個からなるヘリウムの原子核)で、アルファ粒子ともいいます。アルファ線は紙1枚でさえぎることができます。
②ベータ線
原子核から放出される電子で、ベータ粒子ともいいます。ベータ線はアルミニウムなどの金属板でさえぎることができます。
③ガンマ線やX線
ガンマ線は不安定な状態にある原子核が、より安定な状態に移る時に発生する電磁波です。エックス線はガンマ線と発生源が異なり、原子から発生する電磁波です。
どちらも鉛でさえぎることができます。
④中性子線
中性子は原子核を構成する粒子の一つで、中性子線とは中性子の流れをいいます。中性子線は水・コンクリートのように、水素をたくさん含む物質でさえぎることができます。
3,放射線の及ぼす作用
- 電離作用
放射線が物質を通過する時、もっているエネルギーを原子や分子に与え、電子をはじき出す働きを電離といいます。パンクしにくい自動車のタイヤの素材や煙を探知すると警報が鳴る煙探知器は、電離作用を利用して開発したものです。
②蛍光作用
蛍光作用とは、紫外線や放射線などが特別な物質に当たった時、その物質から特殊な光を出させる働きのことです。この光を蛍光といい、蛍光を出す物質を蛍光物質といいます。
X線の発見は、この蛍光作用によるものです。
③透過作用
放射線には、物質を通り抜ける作用があります。病院のエックス(X)線撮影は、この透過作用を利用したものです。また、物質を通った後に放射線の量が減っていることを利用して、水位や鉄板、紙などの厚さを測ることができます。
4、放射線被ばく
①自然放射線
普通の生活においてさえ、常に宇宙や大地からの放射能被爆を受けています。
②被ばくによる人体への影響
放射線は人体に当たると、その細胞の中の分子に衝突し、分子から電子をはね飛ばします(電離)。電離した分子は化学変化し、はね飛ばされた電子は他の分子に化学変化起こします。
放射線の人への影響は、主に細胞のDNA分子の一部が変化してできた傷が多く蓄積することによって現れます。放射線がDNA分子を変化させる仕組みについては、2種類あります。
-
直接作用
放射線がDNAに直接衝突して変化させる。 -
間接作用
放射線が水分子に衝突して活性酸素に変化させ、その活性酸素がDNAを変化させる。
DNAの傷の大部分は、細胞内の酵素によって修復されます。修復されなかった細胞は、細胞死に至るか、または傷がDNAに残されます。
-
細胞死の場合(確定的影響)
少数の細胞が死んでも、その細胞が属していた臓器・組織の機能は正常に保たれます。
大量の放射線が短時間に人体に当たった場合には、臓器・組織の細胞の多くが死ぬため、脱毛、白内障、白血球の一時的減少などの症状が表れます。症状が表れる値をしきい線量と呼びます、おおよそ1%の出現頻度をもたらす値で、確定的影響の指標となります。 -
DNAに傷が残る場合(確率的影響)
DNAに傷が残った細胞は、その傷ががんの発生・進展に関連した遺伝子のDNAにある場合、傷がさらに蓄積されると、がん性の細胞に変化します。一方、がん性細胞の大部分は、免疫などによって、がんへの進展が抑制されています。確率的影響の指標となります。
③被曝量と症状との関係
日常生活においての被曝量を表す図です。
各症状を起こすしきい線量の値です。
確定的影響のしきい線量(ICRP1977年勧告。一部1990年勧告値を取入れた) |
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組織(部位) |
影響 |
しきい線量 (mSv)※1 |
骨髄・血液 |
リンパ球の減少 |
250 |
血小板の減少 |
~1,000 |
|
造血機能低下 |
500 |
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皮膚 |
脱毛、軽度の紅斑 |
3,000 |
水泡から湿性皮膚炎,潰瘍 |
12,000~15,000 |
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水晶体 |
検知可能の白濁 |
500~2,000 |
視力障害(白内障) |
5,000 |
|
生殖 |
一時的不妊(男性) |
150 |
一時的不妊(女性) |
650 |
|
永久不妊(男性) |
3,500~6.000 |
|
不妊(女性) |
2,500~6.000 |
|
胎児 |
胚死亡(受精~9日) |
100 |
奇形(受精後2~8週) |
100※2 |
|
発育遅延(受精後8週以降) |
100 |
|
精神発達遅延(受精後8~15週) |
120 |
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全身 |
60日以内に半数が死亡 (LD50/60) |
4,000~5,000 mGy |
5、まとめ
放射線とは何かという基本的な事柄から、その作用と人体に及ぼす影響を簡単にまとめてみ ました、人体に及ぼす影響では、胎児において奇形のしきい線量が100mSvで体幹部CTの被曝7回程度の値であり、男性の一時不妊のしきい線量は150mSvで体幹部CT10回程度でした、しきい線量の定義では、1%の出現頻度をもたらす値なので、CTを10回や20回被曝すると全ての人がその症状を発症する事は無いのですが、意外と身近にある被曝線量で症状を起こす可能性があり、放射線を人体に照射することにもっと自覚と責任感をもって当たらなければならないと改めて思いました
日常生活においてがんなどの症状を起こす原因は、放射線以外にも様々ありますが、それらの影響のリスクが高い人は、低い被ばく線量により症状が発症しやすくなります、無駄な被曝が無い様に心がけるべきであると思いました。