トリチウムの健康被害
フィルムバッジ(千代田テクノル)の交換時に送られてくる冊子に面白い記事を見つけたので紹介します。
市民のためのがん治療の会 News Letter 2019.1 より
生活環境病を考える~トリチウムの健康被害について 西尾正道
福島第一原発に溜り続ける放射性物質を含んだ汚染水は除去施設(ALPS)により浄化されているのですが、トリチウムは除去できないそうです。
そのために汚染処理水の処理について議論されているらしいのですが、国と東電は最も安い費用で済む海洋放出(費用34億円)をしようとしているらしく、原子力規制委員会の委員長も「現実的な唯一の選択肢」と述べているとのことです。
海洋放出する根拠として、公聴会の資料では「トリチウムは自然界にも存在し、全国の原発で40年以上排出されているが健康への影響は確認されていない」や「トリチウムはエネルギーが低く人体影響はない」とされてるとの事です。
筆者はトリチウムの安全性を唱える国や東電や原子力規制委員会の見解に異を唱えています、トリチウムによる健康被害の報告とそのメカニズムを様々な文献を紹介しながら、ていねいに説明されています。
興味を引いた所をいくつか紹介します。
①トリチウムは他の放射性核種と違って、放射線を出すだけではなく化学構図式も変えてしまう。
トリチウムはβ線を出しており、そのβ線により他の放射線核種同様人体にダメージを与えるのですが、それだけではなくてDNAの二重らせん構造の塩基を結合する水素結合力の基になっている水素原子にトリチウムが取って代わることにより水素結合力を破壊するらしく、それにより二重らせん構造が壊れ塩基・DNAの分子構造が変化し細胞が損傷されるとの事でした。
②カナダの原発周辺ではダウン症候群が80%も増加
カナダの重水炉というトリチウムを多く出すタイプのCANDU原子炉では稼働後しばらくして住民が健康被害が増えていると騒ぎだしたそうです、調査の結果やはり健康 被害が増加していたそうです。
同じカナダのピッカリング重水原子炉周辺都市では小児白血病や新生児死亡率が増加し、ダウン症候群が80%増加していたそうです。
ダウン症候群は21番染色体の数が通常2本なのが3本になることによる症状なのですが、上の①のように通常の放射線核種に比べDNAへの影響がより大きいトリチウムによる可能性は大きいような気がします。日本では「ふげん」が重水炉のようです。
③小柴昌俊氏(ノーベル物理学者)、長谷川晃氏(マックスウェル賞受賞者)がトリチウムを燃料とする核融合の危険性を示唆
小柴昌俊氏(ノーベル物理学者)、長谷川晃氏(マックスウェル賞受賞者)は連名で、2003年3月10日付けで「良識ある専門知識を持つ物理学者として、トリチウムを燃料とする核融合は極めて危険で中止してほしい」と当時の総理大臣小泉純一郎宛てに嘆願書を出しています。
その嘆願書の内容は、トリチウムを燃料とする核融合炉は、安全と環境汚染性から見て、極めて危険なものであり、トリチウムはわずか1mgで致死量になり、約2kgで200万人の殺傷能力があると訴えています。
筆者の西尾先生も「おわりに」にて書いてありましたが、日本は地震火山大国であり、政府もいずれ大きな地震が来ることを公言しています、地震などの災害により原発に影響が起こることは時間の問題なのではないかと思います、災害が起こらないにしても、今現在も原発からトリチウムが発生しています、原発周辺の住民だけでなく、食物連鎖などにより世界中の人々またこれから生まれるであろう子供たちにツケが回ってくる現実を、原発推進する人々は後悔すると思うのですが、その時はもう遅いかもしれません。